Antarctic Record (Mar 1963)

On the Oceanographical Observation of the 6th Japanese Antarctic Research Expedition (1961-1962)

  • Yushiro KUGA,
  • Kunihiko WATANUKI

DOI
https://doi.org/10.15094/00007256
Journal volume & issue
no. 18
pp. 1545 – 1562

Abstract

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第6次南極観測におけるケープタウン,氷海間の海洋観測の結果次のような事実が認められた.1.表面観測によると,往航時には多くの場合認められているSTCの急激な変化が認められたが,帰航時には著しい変化を示さず,往航時とかなり異なった様子を示した.水温の変化はあまり急激ではなく,phosphate-Pは南緯50度あたりでほとんど認められなくなり,珪素はむしろかなり低緯度の方まで認められた.これは今回の氷状の悪かったことと関係するものと思われる.第1号氷山,および最終確認氷山は往復とも南緯50度内外で認められた.このときの水温は2度内外であった.2.プリンスオラフ沖,パックアイスにそって東経33度より49度にわたりほぼ東西に行なった数点の各層観測などから推定される水の動きは50m,100m,150m,200mの等温線から次のように考えられる.表面から50m位の浅い部分では,クック沖がやや温かく,ここに東から冷たい水が流れこんでいる.これは氷の移動と大体一致する.しかし100mよりも深いところではむしろ温かい水が東から西へ流れているようである.クック沖東経33度緯に沿っておよそ60マイル間隔で南北に行なったドレッジの結果によると,南から北に行くに従って礫の数が少なくなり,底質の粒が小さくなるようであった.また南緯65°49'東経49°03'付近のドレッジの結果得られた2500mの底質中には礫が多く,これは氷山による運搬を示すものと考えられる.3.表面が氷で覆われた地域での各層観測の結果から,氷の下の海水はオープンシーの場合と異なることが認められた.氷に覆われた地域では表面から100m位まで-1.8℃で同じであり,100m付近から急激に水温の変化がある.これに反してオープンシーの場合には表面から次第に低温になり,ついで温度が上昇してから再び下降し一定温度になる.海水の酸素含有量も氷の直下ではオープンシーの場合よりも低い値を示している.深い所でははっきりとした差はない.4.ケープタウン南方の南緯41.5度付近は,往航時窒素含量の急激に増加したところであるが,帰航時ここで行なった各層観測の結果によると,水温の変化は複雑で,nitrate-N,nitrite-Nもかなり多く検出された.この地域では水塊の不連続があると考えられる.