Antarctic Record (Jun 1962)

Icefabric Studies on Hamna Ice Fall and Honhorbrygga Glacier, Antarctica

  • Koshiro KIZAKI

DOI
https://doi.org/10.15094/00007189
Journal volume & issue
no. 16
pp. 1392 – 1412

Abstract

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リュッツォホルム湾沿岸には,大陸氷床に源を特つ多くの氷河や氷爆が存在する.そのなかの,ハムナ氷爆とホノールブルッガ氷河を研究の対象とした.この報告は,構造氷河学,つまり,微視的な氷結晶の方位をしらべるだけでなく,巨視的な氷河構造をも含めた予察的な研究である.しかし,ホノールブルッガ氷河の巨視的構造については,その巨大さと表面構造の複雑さ,危険さのために調査はできなかった.氷河の構造は,多くの面構造によって特徴付けられている.それらを次のように分けた.廊下(corridor),クレバス(crevass).透明縞(clear band),片理(foliation),断層(fault),節理(joint),劈開(cleavage).この分類はあくまで現象的なものであり,すべて氷河流動に伴う一連の変形の産物である.氷結晶の方位は,全てこれらの面,とくに透明縞,片理,劈開などの運動面に規定されて発達している.そのパターンは,底面を滑り面とする極大値をひとつ持つもの(single maximum)をはじめとして,偏圧あるいは剪断応力の増加にしたがって,4-極大値を持つダイアモンド型パターン,さらに,5-極大値を持つものに発達する.これらの現象は,RIGSBY(1958)やKAMB(1959)の多極大値にかんする仮説では説明できない.筆者は偏圧の強さに対応して氷結晶の滑り面が変化するために単極大値から多極大値に発展すると考えた.また,氷結晶の波動消光によって認められる結晶軸のわずかな移動とそれに伴う紬粒化作用(polygonization)を観察した.これは,氷結晶の定方位をもたらす初期段階の機構を示すものであろう.